2018-05-09

チェリーパイ落下事件

ボリスケがブリュッセルから帰ってくる日、たまたまスーパーに買い物に行ったので何かお菓子でも作るかと思ったけど時間も気力も無いので、簡単なパティスリーを買うことにした。悩んだあげく、チェリーパイにした。


レジに並んでいると私を最後にこのレジは閉めるという。昼間だったので、お姉さんは昼食休憩にでも行くのだろう。彼女の同僚が寄ってきて、隣のレジを掃除し始めた。

同僚とお姉さんは世話話を始める。話でもしてないとやってらんないよな、と心の中で同意していると、突然チェリーパイが台から落ちた。


ぐちゃっ…
 
広がる沈黙。

無残な姿で床に佇むチェリーパイ…。





私はレジを通った商品たちをカバンの中に詰め込んでいたので、落下事件の現場からは1メートルくらい離れていた。お姉さんが商品を手にとってレジに通す際、何かの拍子でチェリーパイが落下しただけの話である。



沈黙が流れる中、私は誰が新しいチェリーパイを取りに行くんだろうと呑気に考えていた。


いちおう、今日の買い物の主役である。旅で疲れているボリスケを思ってわざわざ買うのだから。もちろんチェリーパイを買わずに帰ることは不可能である。




私は沈黙を保った。
さぁ、このお姉さんは何と言うのだろう。




隣のレジを掃除していたお姉さんがしぶしぶ、
「あらまぁ」といったやる気のない感じでチェリーパイを片付け始めた。
「私も今朝これと同じやつ、落としたわ。パックがちゃんと閉まってないのよねー」

(落ちたのは絶対パックのせいじゃないと思うけど…)




で、誰が取りにいくのよ?





するとお姉さんが
「マダム、それで、どうしますか?新しいのを取りに行くか…それとも」




(えっっっっ私?うそ。私が取りにいくの?)





「なんで私が!あなたのせいでしょう!」
なんて怒る気力も無かったし、そもそもこんな小さなことで怒りたくもなかった。私も仕事終わったばっかで疲れているのよ。


でもため息はついてしまった。
私なりの精一杯の冷酷な顔で彼女たちを見つめたあと、
「取りに行きます」
と小声で行って取りに行ったよ。私は。。

私が働くファーマシーでもモンスター客というのはたくさんいて、私は彼らをとても蔑んでいたし、それに負けず劣らず怒り狂う同僚たちを見て悲しい気持ちになっていた。



私は呑気にゆっくりとチェリーパイを探しに行きました。走りはしなかったけど。


私がレジのお姉さんだったら、まず一言謝って、そのあと走ってチェリーパイ取りにいくけどね。。。



ちなみに翌日は祝日だったんだけど、アクリル絵の具がどうしても足りなくなってその大型スーパーに駄目元で行ったらあった。よかったーと安堵してレジに駆け込むと、まさかの同じレジのお姉さんでお互い超気まずかったよ。笑


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